個人のウェルビーイングを測る代表的な指標「キャントリルの梯子・続編」

役に立つ情報365-47

株式会社あさひデザインワークスの黒岩です。
「梯子に載っていないもの」:キャントリルの梯子・続編
デザインで「みらい」をつくる会社へ。

場面1:「梯子に載っていないものを、どう伝えるか」

前回、梯子の問いの最後に、こう書きました。
「この梯子には、まだ載っていないものがあります」
梯子の上で、自分の人生を評価する。
それ自体は自然な問いです。

でも、その梯子は、誰が立てて、誰が支えているでしょうか。
今回は、その問いから始めます。

場面2:声を持たない関係者を描く

梯子の質問には、回答者欄がありません。
でも、この梯子の高さに関係しているのは、人間だけではありません。


少なくとも三者、この問いの外にいます。
生態系。 川の水位が下がり、森がやせ細る。
      それでも、人間の意思決定に抗議する手段を持ちません。

将来世代。 今日の選択に、投票権も発言権もありません。
       それでも、今日の選択の結果を、最も長く引き受けます。

他地域の人々。 あなたの梯子を支える資源や製品は、どこかの誰かがつくっています。
         その顔は、ランキングのどこにも写りません。

三者に共通するのは、「発言できない」ということです。
声を上げられない以上、誰かが代わりに問わなければ、指標には現れません。

キャントリルの梯子

場面3:氷山モデルで構造まで掘る

この三者の不在は、偶然ではありません。
氷山モデルで、水面下まで辿ってみましょう。

見えているのは「出来事」だけです。
その下には「所得が上がっても幸福度の伸びは緩やかになる」というパターンがあります。

さらに下には、「成長を前提にした指標設計」や「声を仕組みに組み込む手段の不在」という構造があります。

さらに深くには、「今、ここにいる人が満たされていれば良い」という、言葉にされない前提(メンタルモデル)が横たわっています。

この前提を疑わない限り、指標は何度作り直しても、同じ場所に戻ってきます。

氷山モデル
氷山モデル


場面4:循環・再生で検証する

ここで具体例で検証してみます。
幸福度の高さを、環境負荷(エコロジカル・フットプリント)と並べて見ると、違う景色が見えてきます。

エコロジカル・フットプリント

幸福度×環境負荷の2軸|理想ゾーンと要注意ゾーン

環境負荷(エコロジカル・フットプリント)指標の仕組みと構成要素

※ エコロジカル・フットプリントとは
主に以下の6つの分野において、人間が要求する面積を足し合わせて計算されます。
単位には、世界平均の生産力を持つ土地1ヘクタールを表す「グローバル・ヘクタール(gha)」が使われます。

  • カーボン・フットプリント(二酸化炭素吸収地): 化石燃料の燃焼などで排出されたCO2を、海や森林が吸収するために必要な面積。[現在、全体のフットプリントの半分以上を占めています]
  • 農地: 食料、飼料、綿花などを生産するための土地。
  • 牧草地: 肉や乳製品、羊毛などを生み出す家畜を放牧するための土地。
  • 森林: 木材や紙などの林産物を生産するために必要な土地。
  • 漁場: 魚介類を漁獲するために必要な海や湖の面積。
  • 生産活動の基盤(居住地など): 住宅、インフラ、工場などが建てられ、自然の生物生産力が失われた土地。

これらの「人間が自然に求める需要(フットプリント)」と、「地球が資源を再生し廃棄物を浄化する力(バイオキャパシティ)」を比較することで、環境の持続可能性を評価します。

Happy Planet Index(英・NEFの提唱)など、幸福度を環境負荷で割って見る指標では、キャントリルの梯子の上位国とは順位が大きく入れ替わります。

高所得国の多くは「高い幸福度・高い環境負荷」のゾーンに近いと指摘されることがあります
(正確な順位は年ごとに変わるので、記事化の際は最新データの確認が必要です)

つまり、今の段の高さは、自分の地域の資源だけではなく、他地域の環境や将来世代の選択肢を削って成り立っている可能性があります。

「もったいない」の感覚で言えば、余っているものを活かして幸福度を上げる道はあるのか、という問いがここにあります。

場面5:結び(この先をどこまで広げるかは、次回の話です。)

声を持たない三者、その下の構造と前提、そして他者への転嫁の可能性。
ここまで見えてくると、残る問いは一つです。


では、何をやめるか。

次回の「続々編」では、この問いを引き受けて、具体的な引き算の提案に進みます。
それについては、次回。

場面6:キャントリルの梯子で知る「声を持たない関係者」

キャントリルの梯子と氷山モデル

場面7:キャントリルの梯子・続編:誰がその梯子を支えているのか?

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