株式会社あさひデザインワークスの黒岩です。
── SYSTEMS THINKING|システム思考のはなし─
今回:「見えてる問題」の下をみるための、最強ツールをご紹介いたします。
私たちが日々向き合う問題の多くは、海面の上に顔を出した氷山の一角にすぎません。
目に見えるトラブルにその都度対応しても、しばらくすると、よく似た問題がまた現れる
——そんな経験はないでしょうか。
システム思考の「氷山モデル」は、その繰り返しの背後にある構造を見つけるための、とてもシンプルな地図です。
もともとはシステム思考の分野で育ってきた考え方ですが、いまでは組織や社会、環境の課題を読み解くときにも広く使われています。

氷山モデルの4つの層
氷山モデルは、ひとつの問題を4つの深さで捉えます。
上に行くほど見えやすく、下に行くほど見えにくくなります。
いちばん上は「出来事(できごと)」。
いま起きている、目に見えるトラブルです。
クレームが来た、
売上が落ちた、
川が氾濫した
——反応しやすく、対応も急がれます。
その下が「パターン」。
よく似た出来事が、時間をかけて繰り返されている傾向です。
ひとつひとつの出来事を「点」として見るのをやめ、「線」としてつなぐと、「また同じことが起きている」という流れが浮かび上がります。
さらに下が「構造」。
そのパターンを生み出している「仕組み」そのものです。
制度、
ルール、
力関係、
情報やお金の流れ
——だれの善意や努力とも関係なく、放っておけば同じ結果を生み続ける土台です。
そして最も深いところにあるのが「メンタルモデル」。
私たちが無意識に前提としている価値観や思い込みです。
「成長し続けるのが当たり前」
「効率がいちばん大事」
——構造は、こうした前提の上に建てられています。
たとえば、あるお店で「レジ締めのミスが多い」という(出来事)があったとします。
よく見ると、それは決まって忙しい時間帯に起きている(パターン)。
その裏には、一人に業務が集中する人員配置や、複雑すぎる確認手順がある(構造)。
さらに奥には、「ミスは個人の注意不足のせい」という思い込み(メンタルモデル)が隠れているかもしれません。
担当者を叱って気をつけさせるのは出来事への対応、手順や配置そのものを見直すのは構造への働きかけです。
同じ問題でも、どの層に手を当てるかで打ち手はまったく変わります。
対症療法と、その先の根治療法
海面の上、つまり「出来事」に手を当てるのが対症療法です。
痛みをすぐ止められる大切な手当てですが、それだけを繰り返していると、原因は手つかずのまま残ります。
だから、しばらくするとまた同じ症状が顔を出します。
一方、海面の下にある「構造」や「メンタルモデル」に働きかけるのが根治療法です。
時間はかかりますが、問題が繰り返される仕組みそのものを変えられます。
大切なのは、どちらが正しいかではなく「順番」です。
まず対症療法で痛みを止めて時間を稼ぎ、その余力で少しずつ海面の下へ降りていく
——そう捉えると、両者は対立ではなくなります。
深く潜るほど、静かに効く
氷山モデルの面白いところは、深く潜るほど「小さな介入で大きく変わる場所」
——レバレッジポイントが見つかりやすくなることです。
しかもそれは、新しい対策を足すより、問題を生んでいる前提や仕組みを「やめる・減らす」という引き算であることが少なくありません。
対症療法が足し算になりがちなのに対し、根治療法はしばしば引き算なのです。
もうひとつ、忘れたくない問いがあります。
海面の上で問題を「消した」つもりでも、じつは別の場所や未来へ「移して」いないか、という視点です。
堤防を高くすれば水は下流へ、便利な使い捨てを増やせば負荷は将来世代へ。
そのしわ寄せは、声を持たない関係者
——生態系や、まだ生まれていない世代—— に向かいがちです。
構造まで潜る姿勢は、この「転嫁」に気づくための目にもなります。

まとめ
氷山モデルは、答えを出す道具ではありません。
「自分はいま、氷山のどの層を見ているだろう」と問い直すための道具です。
見えている一角に手当てをしながら、その余力で海面の下へ。
問題の見え方が変わると、打つ手も静かに変わっていきます。
「見えてる問題」の下をみるための、最強ツール



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