「シングルループ学習」と「ダブルループ学習」とは?

役に立つ365-33

株式会社あさひデザインワークスの黒岩です。
——組織と個人のイノベーションを引き出す思考法——

組織と個人のイノベーションを引き出す思考法

ビジネスや組織運営において、「頑張って改善を重ねているのに成果が出ない」「いつも同じような問題が再発する」という壁にぶつかることはありませんか?

その原因は、問題に対する**「対処の深さ」**にあるかもしれません。


1. 「シングルループ学習」「ダブルループ学習」の基本

この概念は、アメリカの理論家クリス・アジリス(Chris Argyris)ドナルド・ショーン(Donald Schön)によって提唱されました。

🔄 シングルループ学習(単一回路学習)
既存の「目的」や「ルール(前提)」はそのままで、「やり方(行動)」だけを修正して成果を出そうとする学習です。

イメージ:エアコンのサーモスタット(設定温度20度に対して、暑くなったら冷風を出し、寒くなったら止める行動の繰り返し)
特徴:目の前の問題を素早く解決するのに適しているが、「そもそも設定温度は正解か?」という前提は疑わない。

🔄 🔄 ダブルループ学習(二重回路学習)
行動の修正だけでなく、その背景にある「前提」「価値観」「目的そのもの」にまで遡って見直しを行う学習です。

• イメージ:「なぜ今この部屋を冷やしているんだっけ?」と前提そのものを疑問視する人
• 特徴:これまでの成功体験や「当たり前」を否定する必要があるが、パラダイムシフトやイノベーションを起こすために不可欠。

▼ 2つの学習モデルの比較

比較項目シングルループ学習ダブルループ学習
問いの質「どうすれば上手くいくか?」「なぜこれをやっているのか?」
アプローチの例売れないから、営業の訪問件数を増やす。売れないから、ターゲットや商品コンセプトを見直す。
得られる結果業務の効率化・継続的改善抜本的な構造改革・イノベーション

2. 「ダブルループ学習」が生んだ創造的変化の事例

■ 富士フイルム:事業ドメインの再定義
デジカメの普及で写真フィルム市場が縮小した際、「どうフィルムを売るか」ではなく「自社の本質的強みは何か」という前提に立ち返りました。
フィルム開発で培ったコラーゲン技術やナノ化技術を化粧品・医薬品分野に応用し、劇的な業績復活を遂げました。

■ Apple(iPhone):物理キーボードという前提の破壊
当時の競合他社が「キーボードの押しやすさ」を改善していたのに対し、スティーブ・ジョブズらは「そもそも固定の物理ボタンが常に必要なのか?」という前提を破壊。
全画面タッチパネルという新しいスマホの定義を作り出しました。

■ 花王(アタックZERO):生活習慣・操作の前提変更
「汚れ落ちの強化」という従来の改善競争から、「洗剤はキャップで測るもの」という暗黙の前提を疑い、片手で定量噴射できる「ワンハンドプッシュ」を開発。洗剤の投入アクションそのものを変革しました。

■ ビュートゾルフ(オランダ介護):管理主義の排除
効率化のためにマニュアルや管理体制をガチガチに固める従来モデルに対し、「そもそもなぜ現場を管理職がコントロールするのか?」を疑問視。
管理職ゼロの完全自己組織化チームを展開し、医療の質と患者満足度を向上させました。

3. 「暗黙の前提(メンタルモデル)」をあぶり出す3つのフレームワーク

① 氷山モデル(Iceberg Model)
目に見える「出来事」から潜り込み、「パターン」「構造」、そして最深部にある「メンタルモデル」を特定します。

👉 キラー・クエスチョン
『このルールを破ったら、どんな恐ろしいことが起きると恐れているのだろう?』

② 推論のハシゴ(Ladder of Inference)
人間が事実から思い込みを形成してハシゴを駆け上がるプロセスを逆行し、事実と解釈を切り離します。

👉 キラー・クエスチョン
『その前提に至った、具体的な客観的事実(データ)は何ですか?』

③ 免疫マップ(Immunity to Change)
「目標」「阻害行動」「裏のコミットメント」「固定観念」の4ステップで、変化を拒む自己防衛メカニズムを解明します。

👉 キラー・クエスチョン
『守りたい裏の目的が脅かされたら、自分にどんな最悪の事態が起きると信じ込んでいますか?』


4. 組織導入時の「障害」と「乗り越えるアプローチ」

ダブルループ学習は既存の成功体験や自己否定を伴うため、強い反発が生じます。

📌 代表的な「障害」「対策」は以下の通りです。

📌 障害:心理的脅威と防衛反応
【対策】過去否定ではなく「文脈のアップデート」と伝える。
「これまでのやり方は当時としては正解だったが、ゲームのルールが変わった」というストーリーを構成する。

📌 障害:短期成果のプレッシャー
【対策】全社一括ではなく「特区(出島チーム)」を作り、既存の評価軸から切り離して小さな実験を回す。

📌 障害:個人への非難
【対策】「誰が悪いか」ではなく、「どんなシステム(構造やルール)がその行動を生んでいるか」とシステムに意識を向ける。

📌 障害:リーダーシップの固執
【対策】経営層・リーダー自身が「自分も古い前提に囚われていた」と自己開示(脆弱性の開示)を行う。


📝 まとめ:「未来を変える対話」を始めよう

シングルループ(改善)も大切ですが、変化の激しい時代において真のブレイクスルーを生むのは「ダブルループ学習」です。

行き詰まりを感じたときこそ、「私たちは今、どんな暗黙の前提の上に立っているだろう?」と問いかけてみてください。

「シングルループ学習」から「ダブルループ学習」

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