株式会社あさひデザインワークスの黒岩です。
——デザイン思考×システム思考でサステナビリティ企業をつくる——
はじめに : なぜ「エコ素材への切り替え」だけでは変わらないのか?
「プラスチックごみが問題だから、エコ素材に切り替えました」。
多くの企業のサステナビリティ施策は、こうした ” 目に見える出来事 ” への対応から始まります。
もちろん、それ自体は大切な一歩です。
しかし数年後、気がつけば施策は形骸化し、「SDGsウォッシュ」と呼ばれてしまう―
―そんな事例が後を絶ちません―
なぜでしょうか?
答えはシンプルです・・。
問題の「表面」にしか触れていないからです。
本ブログでは、この壁を越えるための方法論として、「システム思考」と「デザイン思考」を統合するアプローチを提案します。
キーワードは「見立て」と「手立て」。
この2つを循環させることが、表面的な対応で終わらないサステナビリティ企業への道筋です。
1. システム思考で「見立てる」――氷山モデルで問題の深さを測る
氷山モデルに例えると
出来事:目に見える問題(例:大量の商品廃棄)
パターン:繰り返される傾向 ( 例 : 毎シーズン末に廃棄が急増する)
構造:それを生む仕組み(例:欠品を避けるための過剰生産・過剰発注の制度)
メンタルモデル:構造を支える価値観 ( 例:「欠品=悪」「棚が埋まっていて当然」という思い込み)
エコ素材への切り替えは「出来事」レベルの対応です。
しかし、過剰生産の構造やその奥のメンタルモデルが変わらなければ、廃棄そのものは減りません。
システム理論家ドネラ・メドウズが示した「レバレッジポイント」の考え方が教えてくれるのは、深い層への介入ほど、システム全体に及ぼす影響力が大きいということ。
数値目標(パラメータ)をいじるより、ルールや情報の流れを変える方が効き、さらにその奥にあるパラダイム
―「自社は何のために存在するのか」―
―を問い直すことが、最も大きな変化を生みます―
これが「見立て」です。
問題がどの深さで起きているのかを見極めること。
ここを誤ると、どれだけ努力しても対症療法の繰り返しになってしまいます。
2. デザイン思考で「手立てをつくる」―
―ダブルダイヤモンドで人が動く形に翻訳する
しかし、構造が見えただけでは、人も組織も動きません。
「過剰生産の構造が問題だ」と正しく指摘しても、現場の行動は変わらない。
ここで必要になるのが、デザイン思考です。
| 第1のダイヤモンド:正しい問題を見つける | 第2のダイヤモンド:正しい解をつくる |
| 第2のダイヤモンド:正しい解をつくる | 展開:アイデアを発散させ、プロトタイプで小さく試す 提供:検証を重ね、実装して届ける |
エンパシーマップやジャーニーマップで
「なぜ人はサステナブルな選択をしないのか」の実感を掴み
プロトタイピングで小さく試しながら
人が自然に動ける形に落とし込んでいく
これが「手立て」づくりです。
3. 統合モデル:2つの思考をつなぐ「2つの接続点」
では、この2つはどうつながるのでしょうか?
私たちは、「統合の要は次の2つの接続点にある」と考えています。

接続点 ①:氷山の深層が「問いの質」を決める
ダブルダイヤモンドの成否は、第1ダイヤモンドの終点―問題定義の節目―で決まります。
ここで浅い問いを立ててしまえば、その後どれだけ優れたアイデアを出しても、生まれるのは対症療法です。
氷山モデルで掘り下げた「構造」や「メンタルモデル」の洞察を、問題定義に注ぎ込む。
たとえば「廃棄を減らすには?」ではなく、「『欠品=悪』という前提を手放したとき、売り場と生産はどうデザインできるか?」と問い直す。
システム思考の深さが、デザイン思考の問いの質を決めるのです。
接続点 ②:実装した「手立てが」、システムを変え、新たな「見立て」を生む
第2のダイヤモンドで実装された解決策は、それ自体がシステムへの介入です。
介入すればシステムは変化し、新しいパターンが現れ、また新たな「見立て」が必要になる。
つまりこのモデルは一方通行ではなく、「循環」なのです。
「見立てる」 → 「手立てをつくる」 → 「システムが変わる」 →「 また見立てる」。
この循環を組織文化として回し続けられる企業こそが、「本質的なサステナビリティ企業」だと私たちは考えます。
4. 明日からできる3つの実践
最後に、このモデルを自社で動かすための最初の一歩を「3つ」挙げます。
❶ 既存施策を氷山に置いてみる:いま進めているサステナビリティ施策は、氷山のどの層への介入か。
チームでマッピングしてみると、「出来事」層に偏っている現実が見えてくるはずです。
❷ 問題定義の節目に「なぜを5回」を挟む:プロジェクトの問題定義フェーズで、必ず構造・メンタルモデルまで掘り下げる問いのセッションを設ける。
❸ 小さく試して、システムの反応を観察する:完璧な計画より、小さなプロトタイプ。実装後の変化(新しいパターン)を観察する仕組みまでセットで設計する。
おわりに
システム思考は「どこを変えるか」を教えてくれます。
デザイン思考は「どう変えるか」を形にしてくれます。
どちらか一方では足りません。
―「見立て」と「手立て」の循環―
―それが、デザインの力で「みらい」をつくる私たちの答えです。
「見立て」と「手立て」
SDGsの取り組み



最近のコメント