「使いやすい」って、誰にとって?──ユーザビリティとHCDの話

役に立つ365-29

株式会社あさひデザインワークスの黒岩です。
デザインの現場でよく聞く「ユーザビリティ」という言葉。
でも、その本質を問い直すと、もっと深いところに「人間中心設計(HCD)」という考え方が見えてきます。

「このアプリ、使いにくいよね」という会話、日常でよくありますよね。
でも、誰かにとって使いにくくても、別の人には使いやすかったりする。
「使いやすさ」って、実は相対的なものなんです。
そこを出発点に、デザインの世界では「ユーザビリティ」という概念が生まれました。

そしてその背景には、人間中心設計(HCD)という、もっと根本的な考え方があります。
今日は、この二つを一緒に紐解いていきましょう。

「ユーザビリティ」って、そもそも何?

ユーザビリティを一言で言うと、「ある人が、ある目的を、ある状況でどれだけ達成しやすいか」という性質です。

01  有効性(Effectiveness)
目標をどれだけ正確に、完全に達成できるか。
「やりたいことが、ちゃんとできる」かどうかです。
02  効率性(Efficiency)目標達成に、どれだけ少ない手間・時間・労力で辿り着けるか。
「無駄なく、スムーズにできる」かどうか
03  満足度(Satisfaction)使っていて快適か、ストレスがないか。
「気持ちよく使える」かどうか
機能だけでなく、感情的な側面も含みます。

重要なのは、ユーザビリティは「モノそのもの」の性質ではなく、「誰が・何を・どんな状況で使うか」という文脈によって変わる、ということ。

── コンテキストなき「使いやすさ」は存在しない

たとえば、プロのカメラマンにとって使いやすいカメラのUIが、初心者には難解すぎることがある。
同じ製品でも、ユーザーが変われば「使いやすさ」は変わります。

カメラのUX

二人の研究者が教えてくれたこと

ユーザビリティ研究の歴史で欠かせない二人の人物がいます。

Brian Shackel(シャッケル)Jakob Nielsen(ニールセン)
1980年代にユーザビリティの概念を学術的に定義した先駆者。
「効率性・学習性・柔軟性・態度」の4要素で整理しました。

理論的・概念的な土台をつくった人。
「ユーザビリティの10原則(ヒューリスティクス)」を提唱。
「5人でテストすれば問題の85%が見つかる」という法則も有名。

それを実践・普及させた人。

シャッケルが「ユーザビリティとは何か」を問いニールセンが「どう測り、どう改善するか」を広めた。
二人は役割は違えど、「人が使う」という視点をデザインの中心に置こうとした点では共鳴しています。

二人の先駆者

HCD(人間中心設計)とは何か

ユーザビリティが「使いやすさの評価軸」だとすれば、HCD(Human-Centered Design/人間中心設計)はその上位にある「設計思想」です。

HCDとは、製品やサービスを設計するときに、最初から最後まで「使う人」の視点を中心に置くプロセスのこと。
ISO 9241-210という国際規格にも定められています。

HCDの4つの原則

① ユーザーと組織のニーズを明確に理解する
誰が・何のために使うのか。
表面的な「欲しいもの」ではなく、本質的な「必要なもの」を探ります。

② ユーザーを設計プロセスに巻き込む
使う人の声を、設計の途中から反映させていく。
「つくってから聞く」ではなく「聞きながらつくる」。

③ 評価とフィードバックで改善を繰り返す
一度つくったら終わりではなく、実際に使ってみてもらいながら改善し続けます。

④ 学際的なチームで取り組む
デザイナーだけでなく、エンジニア・マーケター・ユーザー自身が協力することが大切です。

UXの教科書

ユーザビリティとHCDは、どう繋がるの?整理するとこうなります。

ユーザビリティHCD(人間中心設計)
「使いやすさ」を評価・測定する概念
結果(アウトカム)
「このUIは使いやすいか?」を問う
「使いやすさ」を生み出す設計プロセス
アプローチ(プロセス)
「なぜ使いにくいか」を探り、改善する

つまり、HCDを実践することでユーザビリティの高い製品・サービスが生まれる、という関係です。HCDはユーザビリティを「測る」のではなく、「育てるための考え方」と言えます。

HCDの実践ステップ

HCDは理念だけでなく、具体的なプロセスとして実践されます。

STEP
利用状況の把握

誰が、どんな環境で、何を目的に使うのかを観察・インタビューで明らかにします。
「ユーザー像」をつくるペルソナ作成もここで行います。

STEP
ユーザー要求の明確化

把握した状況をもとに、「何ができればよいか」「何に困っているか」を言語化します。

STEP
設計案の作成

プロトタイプ(試作品)をつくります。(完璧でなくていい)
「試すためのもの」として素早くつくるのがポイントです。

STEP
評価と改善

実際のユーザーに使ってもらい、問題点を洗い出します。
ここでユーザビリティテストが活躍します。
そしてSTEP1に戻り、繰り返します。

「使いやすいデザイン」は、見えないところにある

ユーザビリティとHCDの考え方は、アプリやウェブサイトだけの話ではありません。
チラシ、パンフレット、店舗のサイン、商品パッケージ―
―あらゆる「伝えるもの」に適用できます。

私たちがデザインを通じて大切にしているのも、まさにここです。
「誰が、どんな状況で、何を受け取るか」を丁寧に想像すること。
その問いを持ち続けることが、本当に届くデザインへの第一歩だと考えています。

優れたデザインは「美しいから目立つ」のではなく、「ちゃんと伝わるから、結果として美しく見える」ことが多い。
ユーザビリティとHCDは、そのための地図です。

この記事が、デザインを「見た目だけのもの」から「人と繋がるための手段」として捉え直すきっかけになれば嬉しいです。

ユーザビリティと人間中心設計の関係

目標 4 質の高い教育をみんなに
目標12 つくる責任つかう責任
目標17 パートナーシップで目標を達成しよう
をメインにサポート業務に取り組みます。
(2026年度 SDGsの取り組み)

株式会社あさひデザインワークスは
「前橋SDGsパートナー」に登録されました。(登録番号:109)

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