株式会社あさひデザインワークスの黒岩です。
デザインの現場でよく聞く「ユーザビリティ」という言葉。
でも、その本質を問い直すと、もっと深いところに「人間中心設計(HCD)」という考え方が見えてきます。
「このアプリ、使いにくいよね」という会話、日常でよくありますよね。
でも、誰かにとって使いにくくても、別の人には使いやすかったりする。
「使いやすさ」って、実は相対的なものなんです。
そこを出発点に、デザインの世界では「ユーザビリティ」という概念が生まれました。
そしてその背景には、人間中心設計(HCD)という、もっと根本的な考え方があります。
今日は、この二つを一緒に紐解いていきましょう。
「ユーザビリティ」って、そもそも何?
ユーザビリティを一言で言うと、「ある人が、ある目的を、ある状況でどれだけ達成しやすいか」という性質です。
| 01 有効性(Effectiveness) | 目標をどれだけ正確に、完全に達成できるか。 「やりたいことが、ちゃんとできる」かどうかです。 |
| 02 効率性(Efficiency) | 目標達成に、どれだけ少ない手間・時間・労力で辿り着けるか。 「無駄なく、スムーズにできる」かどうか。 |
| 03 満足度(Satisfaction) | 使っていて快適か、ストレスがないか。 「気持ちよく使える」かどうか。 機能だけでなく、感情的な側面も含みます。 |
たとえば、プロのカメラマンにとって使いやすいカメラのUIが、初心者には難解すぎることがある。
同じ製品でも、ユーザーが変われば「使いやすさ」は変わります。

二人の研究者が教えてくれたこと
ユーザビリティ研究の歴史で欠かせない二人の人物がいます。
| Brian Shackel(シャッケル) | Jakob Nielsen(ニールセン) |
| 1980年代にユーザビリティの概念を学術的に定義した先駆者。 「効率性・学習性・柔軟性・態度」の4要素で整理しました。 理論的・概念的な土台をつくった人。 | 「ユーザビリティの10原則(ヒューリスティクス)」を提唱。 「5人でテストすれば問題の85%が見つかる」という法則も有名。 それを実践・普及させた人。 |
シャッケルが「ユーザビリティとは何か」を問い、ニールセンが「どう測り、どう改善するか」を広めた。
二人は役割は違えど、「人が使う」という視点をデザインの中心に置こうとした点では共鳴しています。

HCD(人間中心設計)とは何か
ユーザビリティが「使いやすさの評価軸」だとすれば、HCD(Human-Centered Design/人間中心設計)はその上位にある「設計思想」です。
HCDとは、製品やサービスを設計するときに、最初から最後まで「使う人」の視点を中心に置くプロセスのこと。
ISO 9241-210という国際規格にも定められています。
HCDの4つの原則

ユーザビリティとHCDは、どう繋がるの?整理するとこうなります。
| ユーザビリティ | HCD(人間中心設計) |
| 「使いやすさ」を評価・測定する概念 結果(アウトカム) 「このUIは使いやすいか?」を問う | 「使いやすさ」を生み出す設計プロセス アプローチ(プロセス) 「なぜ使いにくいか」を探り、改善する |
HCDの実践ステップ
HCDは理念だけでなく、具体的なプロセスとして実践されます。
誰が、どんな環境で、何を目的に使うのかを観察・インタビューで明らかにします。
「ユーザー像」をつくるペルソナ作成もここで行います。
把握した状況をもとに、「何ができればよいか」「何に困っているか」を言語化します。
プロトタイプ(試作品)をつくります。(完璧でなくていい)
「試すためのもの」として素早くつくるのがポイントです。
実際のユーザーに使ってもらい、問題点を洗い出します。
ここでユーザビリティテストが活躍します。
そしてSTEP1に戻り、繰り返します。
「使いやすいデザイン」は、見えないところにある
ユーザビリティとHCDの考え方は、アプリやウェブサイトだけの話ではありません。
チラシ、パンフレット、店舗のサイン、商品パッケージ―
―あらゆる「伝えるもの」に適用できます。
この記事が、デザインを「見た目だけのもの」から「人と繋がるための手段」として捉え直すきっかけになれば嬉しいです。
ユーザビリティと人間中心設計の関係



最近のコメント