「製品・サービス・循環システム」をセットでデザインする

役立つ365-25

株式会社あさひデザインワークスの黒岩です。|デザインで「みらい」をつくる会社へ。
次世代のものづくりとビジネスモデルの統合設計

「良い製品をつくれば売れる」という時代は終わった。
いまデザイナーやビジネス開発者に求められているのは、製品単体の完成度ではなく、「その製品がどう使われ、どう戻り、どう再生されるか」というシステム全体を構想する力だ。

本稿では、プロダクト・サービス・システム(PSS)という考え方を軸に、ダブルダイヤモンドモデルを使って「製品+サービス+循環システム」をセットでデザインするアプローチを解説する。

1|なぜ「製品だけ」では不十分なのか

 従来のものづくりは、製品の設計・製造・販売という直線的な流れを前提としていた。
使用後の廃棄や資源の行方は、メーカーの責任範囲の外にあった。

しかし今日、この線形モデルは3つの構造的問題を抱えていることが明らかになっている。

問題1:資源の枯渇埋蔵資源への依存は、地政学リスクと環境負荷を同時に高め続ける
問題2:廃棄の限界埋め立て処分可能なスペースは世界的に逼迫し、海洋汚染・土壌汚染が深刻化している
問題3:価値の喪失一度使われた素材・部品・技術に再び価値を与えるシステムが存在しない

この3つを同時に解決しようとするとき、「製品をどう変えるか」ではなく「製品を取り巻くシステムをどう設計するか」という問いに変換する必要がある。

2|PSSとは何か――製品・サービス・システムの統合

 PSS(Product-Service System:プロダクト・サービス・システム)とは、製品の販売にとどまらず、その製品に付随するサービスと、使用後の回収・再利用システムを一体としてデザインする考え方だ。

コーヒー由来の素材を使ったパッケージは「カフェらしさ」という世界観とも自然につながります。

PSSは大きく3つのモデルに分類される。

① 製品指向型(Product-Oriented)製品の販売を主体とし、付加的なサービス(保守・修理・アップグレード)を組み合わせるモデル。
従来型に最も近く、移行ハードルが低い。
② 利用指向型(Use-Oriented)製品の所有権をメーカーが保持しつつ、使用権のみを顧客に提供するモデル。リース・レンタル・シェアリングが該当する。
製品が戻ってくる設計になるため、循環の起点になりやすい。
③ 結果指向型(Result-Oriented)製品そのものではなく、「結果・機能・価値」を販売するモデル。たとえば「移動手段の提供」「快適な室温の維持」など。
最もシステム設計の自由度が高く、サーキュラーエコノミーとの親和性も高い。

重要なのは、このどれが「正解」かではなく、文脈に応じてどのモデルを選択・組み合わせるかをデザインすることだ。

3|ダブルダイヤモンドで循環システムを設計する

ここでダブルダイヤモンドモデルが活きてくる。
循環システムの設計は複雑な利害関係者と条件が絡み合うため、「発散と収束」を繰り返す構造が不可欠だ。

フェーズ問いアクション例循環への接続
Discover誰が、何に困っているか?観察・インタビュー・フィールドワーク廃棄・返却の現場を見る
Define本質的な課題は何か?インサイト抽出・課題再定義循環の「断絶ポイント」を特定
Developどう解決できるか?プロトタイプ・サービス設計・素材選定PSS/循環モデルの試作
Deliver何が機能するか?テスト・反復・スケール設計回収・再製造フローの確立


注目すべきは、各フェーズで「循環への接続」という視点が加わることだ。
Discoverでは廃棄・返却の現場を観察し、
Defineでは循環が断絶している構造的なポイントを特定する。
Developで複数の循環モデル(リース・シェアリング・再製造など)を並行して試作し、
Deliverで回収フローを含むサービス体制を確立する。

4|事例:Interface社のカーペットタイルに見る統合設計

この考え方を体現した先駆的事例が、米国の床材メーカーInterface社だ。

Discover:
廃棄の実態を観察する
従来のカーペットは一部が傷んでも全面交換が常識だった。
廃棄量・コスト・廃棄ガスのデータを可視化したことで、「一部が傷むたびに全部捨てる」構造の非合理性が明確になった。
Define:
問いを再設定する
「カーペットが傷む」は表面的な問題だ。
本質的課題は「交換の単位が大きすぎる」という設計上の問題と再定義された。
これによって、解決の方向性がまったく変わった。
Develop:
複数の循環モデルを試作する
タイル単位での交換モデル、メーカーによる回収・再製造サービス、古いタイルを新しい製品原料に還元するリサイクルシステムなど、製品・サービス・仕組みを同時にプロトタイプした。
Deliver:
統合システムとして展開する
「タイル型カーペット+部分交換サービス+素材回収・再製造フロー」をひとつのビジネスモデルとして市場投入。
廃棄量の大幅削減と、製品ライフサイクルを通じた新たな収益源の両立を実現した。

5|統合設計の4原則

PSS×ダブルダイヤモンドの実践から見えてくる設計原則をまとめる。

統合デザインの4原則

✓  原則 ①素材の「出口」から逆算してデザインする(End-of-Life First)
✓  原則 ②所有ではなく「使用・関係・体験」を売る価値モデルへ転換する
✓  原則 ③ユーザー・メーカー・回収業者・次のユーザーを含む全ステークホルダーを設計対象にする
✓  原則 ④製品と並走するサービスレイヤーが、循環を継続させるインフラになる

これらの原則は、サステナビリティをコストや制約として捉えるのではなく、新しい価値創造の源泉として設計に組み込む視点から生まれている。

6|デザイン会社・ブランドへの示唆

PSSと循環設計」は、大企業だけのものではない。
デザイン会社やスタートアップ、地域のものづくり企業にとっても、新しいビジネスモデルの構築機会だ。

  • 製品の「その後」をサービスとして設計し、顧客との長期的関係を築く
  • 素材・部品の回収を「コスト」ではなく「原料調達の内製化」として設計する
  • 循環の透明性をブランドの信頼性に変える(素材追跡・サーキュラーレポート等)
  • 地域の回収ネットワーク・リサイクル業者・修理職人と連携し、循環インフラをデザインする

最終的に、統合設計が目指すのは「製品が世界に存在し続けるかぎり、その責任を担い続ける」という姿勢のデザイン化だ。

おわりに

「製品をつくる」から「システムをデザインする」へ。
この転換は、デザイナーの仕事を大きくする。製品の形状や素材だけでなく、使われ方・返却の仕組み・素材の再生フロー・次のユーザーへの引き継ぎ方まで、設計の射程に入る。
ダブルダイヤモンドは、その複雑な射程を「発散と収束」の構造によって秩序立て、実践可能にするツールだ。
PSS×ダブルダイヤモンドの統合設計は、サステナブルデザインが「価値観の表明」にとどまらず、「機能するシステム」として社会に根ざすための、現実的な方法論である。

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