株式会社あさひデザインワークスの黒岩です。
日本国内でも、デザインを通じた社会課題解決の取り組みが加速しています。
行政・NPO・民間企業・デザイン会社が連携する形で生まれたプロジェクトを中心に、2026年注目の10の動きをご紹介します。
1. 福祉×デザインの産業化
障がい者施設での製品開発に、プロのデザイナーが参画する「福祉×デザイン」の動きが全国的に広がっています。
単なる支援ではなく、商品としての品質と物語を両立させた製品が小売市場に並ぶようになっています。
「福祉×デザイン」は、福祉を「与える・保護する」ものから、「共に新しい価値を創造する」ものへと変えるパワフルなアプローチです。

2. 被災地産品のブランディング継続支援
能登半島地震をはじめ、継続する被災地支援の文脈で、地域産品の再ブランディングプロジェクトが複数走っています。
「被災地産品のブランディング継続支援」とは、地震や豪雨などの自然災害によって打撃を受けた地域の産業を復興させるため——
・ 「被災地だから買って応援する(応援消費)」という一過性のフェーズから脱却。
・ 「純粋に商品として魅力的だから買う」という持続可能なビジネスモデルへと転換させるための長期的なサポートを指します。
3. 外国人向けやさしい日本語のビジュアルデザイン化
増加する在日外国人に向けた「やさしい日本語」と、それをビジュアル化した情報デザインの整備が、自治体を中心に進んでいます。
「やさしい日本語」は、語彙や文法をシンプルにする「言語的アプローチ」ですが、これに「ビジュアルデザイン」を掛け合わせることは、情報の伝達スピードと正確性を飛躍的に高める上で非常に重要です。
- タイポグラフィとルビ(ふりがな)の最適化リスト
読み間違いを防ぐUD(ユニバーサルデザイン)フォントの採用。 - 情報の階層化(チャンク化)
長い文章を避け、情報を小さなブロック(チャンク)に分けます。 - ピクトグラムとインフォグラフィックスによる補助リスト
日本語の単語が100%理解できなくても、アイコンや図解の文脈から「何をすべきか」を推測できるように補完。
4. ヤングケアラー支援の認知啓発デザイン
家族のケアを担う子ども「ヤングケアラー」の問題を広く知ってもらうための啓発コミュニケーションに、デザインが活用されています。
当事者が「自分のこと」と気づけるビジュアルの設計が課題の核心です。
ヤングケアラー支援におけるデザインは、「支援者」と「当事者」の間に存在する認識のズレを埋め、言葉にならないSOSをすくい上げるための不可欠なツールです。
5. 孤独・孤立対策のコミュニティデザイン
政府の孤独・孤立対策と連動した、地域コミュニティの再設計プロジェクトが増加。
この課題に対するコミュニティデザインの難しさは、「私は孤独です」と自己申告して支援を求める人が非常に少ないという点にあります。
物理的な空間設計とデジタルプラットフォームを組み合わせた「つながりのデザイン」が注目されています。
6. 食品ロス削減のUIデザイン
飲食店・小売業向けのフードロス削減アプリのUI改善や、消費者の行動変容を促す情報設計が進化しています。
食品ロス(フードロス)の削減は、単に「もったいない」という個人の道徳心や意識の向上に頼るフェーズから、テクノロジーとUI(ユーザーインターフェース)の力で「無意識のうちにロスを防げる仕組み」を作るフェーズへと移行しています。

7. 更年期・女性の健康課題の可視化
従来タブー視されてきた更年期症状や月経についての情報を、デザインの力で開かれたコミュニケーションに変える動きが活発化しています。
職場での理解促進と当事者支援の両方を目指した表現が増えています。
女性の健康課題の可視化は、当事者が声を上げやすくするだけでなく、周囲の無理解や偏見といった「社会の側にある壁」を取り払うための極めて有効なデザインアプローチです。

8. 空き家・空き地の創造的再生
全国的に問題となる空き家・空き地を、デザインを通じて地域資源として再定義するプロジェクトが各地で動いています。
コミュニティスペース、シェアオフィス、農地——用途の多様化とビジュアルのリデザインがセットで行われています。
日本全国で急増する「空き家・空き地」の問題
防犯・防災上のリスクや景観の悪化から、長らく「負の遺産(厄介者)」として扱われてきました。
しかし近年、この空間的な余白を
「新しい価値を生み出すためのクリエイティブな資源」として捉え直し、エリア全体の価値を向上させる「創造的再生」の動きが加速しています。
単なる不動産取引やリフォームの枠を超えた、デザインとコミュニティづくりの視点から再定義するプロジェクトが各地で動いています。

9. ケアワーカーの社会的地位向上キャンペーン
介護・保育・看護に関わるケアワーカーの労働環境改善と社会的評価向上を目的としたコミュニケーションキャンペーン。
※これまでのケアワーカー向けキャンペーンは、「感謝」や「やりがい」を強調するものが主流でしたが、実はそのアプローチ自体が地位向上を阻む要因になっているというジレンマがあります。
地位向上を実現するための3つのデザインアプローチ
・「感情」から「高度な専門スキル」への翻訳。
(言語化しづらい暗黙知のスキルを、インフォグラフィックスやドキュメンタリー映像を用いて、「プロフェッショナルの技術」として視覚化・言語化します。)
・経済合理性・社会インフラとしての価値提示。
(ケアワークを「弱者を助けるコスト」としてではなく、「社会の生産性を支える不可欠なインフラ(投資)」として再定義するデータの見せ方が重要となります。)
・ビジュアル・トーンの大胆な刷新。
(福祉特有の柔らかいトーン&マナー」をあえて捨て、「カッコいい」「知的でクールな専門職」としてのブランディングを図ります。)
10. こどもの権利条約のビジュアルコミュニケーション化
「こどもの権利条約(児童の権利に関する条約)」
こどもの権利についての認知・理解を深めるための、子ども向け・大人向け双方のビジュアルコンテンツ開発が各地の自治体・NPOで進んでいます。
50以上の条文からなる難解な法律用語で構成されており、当事者である子どもたち自身や、彼らを守るべき周囲の大人たちにすら、正確な内容が十分に浸透していないという大きな課題があります。
1.「権利」をビジュアル化する必要
ビジュアルデザインは、この抽象的な概念を直感的に理解できる「自己防衛のための盾」に変える役割を担っています。
2.こどもの権利を視覚化する3つのデザイン要素
単に条文にイラストを添えるだけではなく、子どもの認知発達や日常の文脈に寄り添った情報設計が必要。
3.大人(義務教育者・保護者)に向けた視覚的アプローチ
こどもの権利条約のビジュアル化は、実は子ども以上に「大人の意識を変える」ためのツールでもあります。
「子どもの意見を聴く=子どもの言いなりになることではない」というプロセスを視覚的にガイドすることで、教育現場や家庭での適切な対話を促します。

「1から10の動き」に共通するのは?
これら「10の動き」に共通するのは、「知らせること」だけでなく「行動を変えること」を目標にデザインが設計されている点です。
認知から行動へ——ソーシャルグッドデザインの成熟を感じます。
SDGsの取り組み



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