104試合で生まれるゴミを0にする挑戦【FIFA WC2026-5】

ワールドカップ2026

株式会社あさひデザインワークスの黒岩です。
── サーキュラーエコノミーとスポーツ。廃棄物ゼロへのデザインアプローチ。

試合が終わったあと、スタジアムに何が残るか——想像してみてほしい。

8万人が詰め掛けた会場には、食べかけのホットドッグの包み、使い捨ての紙コップ、大量のプラスチックボトル、チームフラッグのポリエステル片、試合前に配られたフリーペーパーが散乱している。
それが104試合分、39都市で繰り返される。
FIFA ワールドカップ2026は史上最多の試合数を誇る大会だ。
それはすなわち、史上最大規模の廃棄物ポテンシャルを持つ大会でもある。
しかし同時に、スポーツイベントにおけるサーキュラーエコノミーの実践を最大スケールで試みる場でもある。

今日は「廃棄物とデザイン」という、あまり語られない角度からWC2026を読み解いていく。

目次

01  まず数字で理解する:スポーツイベントの廃棄物規模

問題の規模感を掴むために、いくつかの数字を見ておこう。

📊  スポーツイベントの廃棄物データ(参考値)
・ 2014年ブラジルW杯:大会期間中に発生した廃棄物は推計数万トン規模
・ 米国の NFL スーパーボウル1試合:廃棄物約45トン(リサイクル率は会場により30~80%)
・ オリンピック大会全体:建設廃材を含めると数十万トン規模に達することも
・ 観客1人が1試合で出すゴミの平均:約0.5~1.5kg(食品・容器・パンフ等)

WC2026の場合:延べ来場者数は1,000万人超が見込まれる

この規模のイベントで「廃棄物ゼロ」を目指すことは、現実的には極めて難しい。
しかしだからこそ、「どこを削減できるか」「何を循環させられるか」という問いを設計レベルで組み込むことが重要になる。

02  廃棄物の旅:発生から再生まで

WC2026における廃棄物管理の流れを発生分類・回収再生・循環の3段階で整理すると、各ステップに固有の設計課題があることが見えてくる。

廃棄物の発生 🔄分類・回収 ♻再生・循環
食品・容器・ユニフォーム会場内ステーション堆肥・リサイクル素材
建設資材・輸送梱包ボランティア教育・多言語表示地域コミュニティへ還元

この流れのなかで最もデザインが介入できる余地が大きいのは「発生」段階だ。
問題が起きてから対処するのではなく、そもそも廃棄物が生まれにくい設計にする——
これがサーキュラーデザインの根本思想だ。

03  カテゴリ別:何が多く、どう循環させるか

WC2026で発生する廃棄物を主要カテゴリに分けると、それぞれにサーキュラーエコノミーの施策が対応している。

廃棄物カテゴリ主な課題サーキュラー施策
食品廃棄物試合直前・直後に集中する大量の食品ロス会場内堆肥化設備の設置、余剰食品の地域フードバンクへの寄付
使い捨て容器プラスチックカップ・ストロー・包装材の大量消費リユーザブルカップの有料デポジット制、紙・生分解素材への切り替え
テキスタイル類観戦後に捨てられるフラッグ・横断幕・ユニフォームスポンサーによるテキスタイル回収ボックス設置、繊維リサイクルへ
建設・改修廃材スタジアム改修で発生するコンクリート・鉄鋼類既存スタジアム活用で新設を最小化、解体時の素材再利用設計
印刷物・紙類チケット、パンフレット、サイネージ等の紙廃棄物デジタルチケット化の推進、再生紙・FSC認証紙の使用
電子廃棄物大会後に不要になる仮設設備・電子機器類機器のリース活用、大会後の機器寄贈プログラム

04  サーキュラーエコノミーの3原則をスポーツで読む

サーキュラーエコノミーのフレームワーク(エレン・マッカーサー財団モデル)は「廃棄物と汚染をなくす」「製品と素材を使い続ける」「自然システムを再生する」という3原則で構成される。
これをWC2026に当てはめると——

  廃棄物と汚染をなくす🔁  製品と素材を使い続ける
Eliminate waste and pollutionCirculate products and materials
使い捨て容器の禁止・削減、マイクロプラスチックを出さない素材選定、食品ロスを生まない販売設計。「最初から出さない」発想が起点。リユーザブルカップのデポジット制、テキスタイルの回収・再生、建設資材の再利用設計。「使ったら捨てる」から「使い続ける」へ。
🌱  自然システムを再生する🎯  WC2026での実践ポイント
Regenerate natureKey implementation at WC2026
食品廃棄物の堆肥化による土壌還元、天然芝の維持による生態系保全、緑地の保護と拡充。スタジアムが「自然の一部」になる設計。FIFAは各ホスト都市に廃棄物管理計画の策定を義務づけ。サンフランシスコ、シアトルなど環境意識の高い都市では独自の循環施策が動いている。

05  デザイン思考で読む:「システムとしてのスタジアム」

ここで私たちの仕事に引き付けて考えたい。
サーキュラーエコノミーの発想は、スポーツイベントの廃棄物管理だけでなく、コミュニケーションデザインやブランド設計にも直接応用できる。

スポーツの廃棄物課題サーキュラーデザインの応答デザイン会社への応用
一回使いの販促物が大量廃棄デポジット制・リユース可能設計チラシより長く使えるコンテンツ・永続的なデジタル資産設計
イベント後に価値がゼロになる装飾解体後も再利用できる素材・構造キャンペーン終了後も機能する世界観・ブランドシステムの設計
来場者が「持ち帰れない」体験設計記憶・コミュニティに残る体験の組み込みクライアントの物語を「次のステークホルダーに届く形」でデザインする
廃棄物の見えない外部コスト全体コストの可視化と設計への組み込み短期コストだけでなく社会的インパクトを含めた価値評価の提示

サーキュラーデザインとは、「終わり」を設計しないことだ。
すべての素材・体験・関係が、次のサイクルの始まりになる。


— サーキュラーデザイン思想より(要約)

06  Z世代へ:「ゴミを持ち帰る」ことが応援になる時代

試合観戦でゴミを出さない工夫は、もはや「意識が高い人だけのもの」ではなくなってきた。
マイボトル持参、購入前のパッケージ確認、会場での分別徹底——
それぞれは小さな行動でも、Z世代がそれをSNSでシェアすることで文化になっていく。

いくつかの欧州クラブでは「エコ観戦デー」を設けて、マイカップ持参の来場者に割引を提供している。
応援とサステナビリティが一致する体験設計——これはWC2026でも部分的に試みられている。

ゴミを「観戦の副産物」ではなく「設計できる変数」として捉え直す。
その視点を持つだけで、スタジアムで見える景色が変わる。

SDGsの取り組み

目標 4 質の高い教育をみんなに
目標12 つくる責任つかう責任
目標17 パートナーシップで目標を達成しよう
をメインにサポート業務に取り組みます。
(2026年度 SDGsの取り組み)

株式会社あさひデザインワークスは
「前橋SDGsパートナー」に登録されました。(登録番号:109)

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