スタジアムは再生エネルギーで輝く【FIFA WC2026-2】

ワールドカップ2026

株式会社あさひデザインワークスの黒岩です。
── 4,000枚のソーラーパネルと、エネルギーから問い直す建築デザイン 開幕まであと16日

スタジアムに明かりが灯るとき、そのエネルギーはどこから来るのだろう。

試合開始の90分前、ピッチを照らす無数のLEDが点灯する。
スコアボードが動き出し、大型スクリーンが映像を流し始め、音響システムが会場を満たす。
現代のスタジアムは巨大なエネルギー消費装置だ。
しかしFIFA ワールドカップ2026では、いくつかの会場がその常識を書き換えようとしている。

今日は「スタジアム×再生可能エネルギー」をテーマに、建築とサステナビリティが交差するデザインの現場を見ていく。

私たちはデザイン会社として、ただの観戦記ではなく、サステナブルデザインの視点でワールドカップを読み解くブログを毎日届けていく。今日はその第1回。まず問いを立てよう。

目次

01  アトランタが証明したこと:4,000枚のソーラーパネル

アトランタの Mercedes-Benz スタジアムは、WC2026の16会場のなかでも特に注目すべき存在だ。
屋根一面に敷き詰められた4,000枚以上のソーラーパネルはオンサイト発電を実現し、スタジアムは再生可能エネルギーで稼働している。

この取り組みが画期的なのは、「後からグリーンにした」のではなく、2017年の開業当初から持続可能性を設計の中心に据えていた点だ。
建物の機能とエネルギー源を一体化させる——
それはまさにデザイン思考が追い求めてきた「根本からの問い直し」である。

スタジアムのサステナビリティ戦略は、試合当日だけのものではない。
365日、地域のエネルギーインフラとして機能してこそ意味がある。

— Mercedes-Benz スタジアム サステナビリティレポートより(意訳)

02  ヒューストンの「100%再生可能電力」宣言

もう一つの注目事例がヒューストンだ。
同市の WC2026 ホストコミッティは、「大会期間中のメイン公式サイトに供給する電力を100%再生可能エネルギーで賄う」ことを約束した。
一時的な解決策に頼らず、地域のグリーンエネルギーグリッドと連携することで、この公約を実現しようとしている。
ヒューストンはもともと石油・ガス産業の中心地として知られる都市だ。
そこが「再生可能電力100%」を掲げることは、象徴的な意味も大きい。
エネルギー産業の転換を最前線で体験している都市だからこそ、その宣言には重みがある。

03  注目の5会場:エネルギーとデザインの最前線

Mercedes-Benz スタジアム
アトランタ(ジョージア州)

4,000枚以上のソーラーパネル設置。
再生可能エネルギーで稼働。
廃棄物9095%リサイクル実績。

NRG スタジアム
ヒューストン(テキサス州)

大会期間中の主要施設に100%再生可能電力を供給。
エネルギー効率化の一時対策も並行導入。

SoFi スタジアム(大会名:LA スタジアム)
ロサンゼルス(カリフォルニア州)

屋根付き全天候型スタジアム。
LEDシステム全面採用。
大会期間中は再エネ調達を強化。

BC プレイス
バンクーバー(カナダ)

カナダ唯一の屋根付き天然芝スタジアム。
水力発電が豊富なBC州の再エネグリッドを活用。

アステカスタジアム(改称:メキシコシティスタジアム)
メキシコシティ(メキシコ)

1968年五輪から使われる歴史的会場。
大会向けに天然芝を全面改修。既存インフラ活用の象徴。

04  天然芝という選択:意外なカーボン戦略


今大会のエネルギー戦略で見落とせないのが「芝生」だ。
16会場すべてに天然芝を導入するFIFAの決定は、単なる競技環境の問題ではない。

天然芝の環境効果詳細
光合成による吸収天然芝は成長過程でCO₂を吸収し、カーボンシンクとして機能す
都市熱島の緩和人工芝より表面温度が低く、都市部の熱ストレスを軽減する
生物多様性の確保小型昆虫・微生物が生息できる土壌環境を維持する
維持エネルギーの削減人工芝の交換・廃棄に伴う製造エネルギーが不要になる

人工芝はプラスチック素材のため、廃棄時のマイクロプラスチック汚染が問題視されている。
天然芝への全面切り替えは、試合品質の向上だけでなく、廃棄物・生態系・都市気候の3つの課題に同時に応えるデザイン的判断だと言える。

05  デザイン思考で読む:「システムとしてのスタジアム」

ここで一度、デザイン会社として問いを立て直してみたい。
私たちが日々取り組んでいるのは、物事の「根本」を問い直し、人・社会・環境をつなぐ解決策を形にする仕事だ。
スタジアムというビルディングタイプを「試合をするための器」として設計するか、「地域のエネルギーハブ」として設計するかで、アウトプットはまったく異なる。

Mercedes-Benz スタジアムが体現しているのは後者の発想だ。

思考のレベル問いの立て方結果
従来の問い「どこにソーラーを置けるか?」付け足し・後付けの発想
デザイン思考の問い「スタジアムをエネルギー源にできるか?」システム全体を再定義する

この「問いの立て方の違い」こそが、サステナブルデザインの核心だ。
私たちが企業のコミュニケーションやブランド戦略に取り組む際も、同じ問いの転換を促している。

「何を作るか」ではなく「何のために、誰のために、いつまでに、どんな影響を残すか」——。

💡 デザイナーのための問い
あなたの関わるプロジェクトで、エネルギーやリソースの「出口」まで設計できているか?
スタジアムがエネルギーを生み出すように、あなたの仕事は何を生み出し、何を残せるか?

06  Z世代へ:推しスタジアムの「エコ偏差値」を調べてみよう

ワールドカップを観戦するとき、スタジアムの「エコ偏差値」を気にするサポーターはどれだけいるだろうか。
Z世代の間では、好きなアーティストのツアーが「カーボンオフセット」しているか調べる層が増えている。
スポーツ観戦でも同じ意識が広がりつつある。

今大会では各ホスト都市が独自の環境計画を公開している。
試合会場を選ぶ基準に「その会場の再エネ比率や廃棄物ポリシー」を加えてみるのも、新しい観戦スタイルのひとつかもしれない。

エコな会場を推すこと——それは「応援」の概念をピッチの外に広げる、Z 世代ならではのアクションだ。

SDGsの取り組み

目標 4 質の高い教育をみんなに
目標12 つくる責任つかう責任
目標17 パートナーシップで目標を達成しよう
をメインにサポート業務に取り組みます。
(2026年度 SDGsの取り組み)

株式会社あさひデザインワークスは
「前橋SDGsパートナー」に登録されました。(登録番号:109)

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